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2017.09.28 「第六回 電力エネルギー未来技術シンポジウム」講演要旨

「第六回 電力エネルギー未来技術シンポジウム」講演要旨

『環境負荷低減と機動力向上に向けた火力発電技術開発動向』
幸田 栄一
(一財)電力中央研究所
エネルギー技術研究所
エネルギープラットフォーム創生領域 副研究参事

再生可能エネルギーが大量導入される中、火力機は電力品質維持のために頻繁な負荷変化や機動停止を強いられるなど、過酷な運用がなされている。 このような運用に対応するため、起動時間の短縮や負荷変化速度の向上、最低負荷の引き下げなどを目指した技術開発が進められている。 一方で将来的にはゼロエミッションかも見据えたCO2排出量の大幅削減が求められており、高効率化や再生可能エネルギー由来燃料の活用などの技術開発も進められている。本講演では、これら各技術の概要と位置づけ、将来展望について紹介する。

『大量の間欠性出力電源が連系した電力システムの需給バランス制御技術』
斎藤 浩海
東北大学大学院工学研究科
電気エネルギーシステム専攻 教授

近年の電力システムは、太陽光発電、風力発電といった出力が天候に依存して不確実かつ間欠的に変動する電源の大量連系によって種々の課題に直面している。軽負荷期に太陽光発電による発電過剰が既存火力電源の出力調整力を不足させ、電力システムの需給バランス能力を低下させてしまうことや、配電線の末端に連系したメガソーラ―が配電電圧を上昇させて適正電圧レベルを逸脱させてしまうことなどの問題が生じつつある。さらに電力自由化に伴う発送電分離により、発電調整量の確保の複雑化や高経年電力設備の更新の困難さなど、安定な電力供給に対する懸念もある。本講演では、このような現状の電力システムにおいて、需給バランス維持を支援するための大型蓄電池制御と地中熱ヒートポンプ空調機を活用した負荷制御の研究について紹介する。

『水素製造技術を活用した再生可能エネルギーの出力変動対策』
加藤 尚
東北電力(株)
研究開発センター 電気利用グループ 主幹研究員

再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、出力変動をどのように抑制していくかが課題となっており、対策に取り組む必要があります。 今回、当社研究開発センター構内に太陽光発電設備、水素製造装置や燃料電池等から構成される水素製造システムを設置し、太陽光発電による電気を水素製造に使用し、出力変動を吸収することで、水素製造が蓄電池と同様に再生可能エネルギーの導入拡大に伴う出力変動対策として適用可能かを検証するため、研究を開始しましたのでその概要をご報告します。

『SOFC-MGT ハイブリッドシステムの市場導入に向けた取り組み』
高島 正
三菱日立パワーシステムズ(株)
燃料電池事業室 主幹技師

三菱日立パワーシステムズ(株)(MHPS)は、高効率で環境調和性が高い発電システムとしてSOFCの開発を進めており、商用化を目指し、SOFCとマイクロガスタービン(MGT)とのハイブリッドによる250kW級発電システムを開発してきた。これまで九州大学に実証機プロトタイプを納入し、累積発電時間10,000時間を超える運転を進めているが、2016年度からは、NEDO助成事業で本ハイブリッドシステムの4現地での実証試験を行い、耐久性の検証、起動停止特性、負荷変化特性などを確認した。これらの結果を反映し、2017年度より同システムの市場導入活動を開始した。 本報告では、SOFC-MGTハイブリッドシステムの市場導入への取り組みとして、実証試験結果と今後の計画を報告する。

『エネルギー技術開発のための地殻利用の現状と課題 -地熱発電とCO2地下貯留技術-』
橋田 俊之
東北大学大学院工学研究科
附属先端材料強度科学研究センター 教授

地下空間は,環境に調和したエネルギー抽出・資源循環を行うために有用な場であり,今後,積極的な利用が望まれている。本講演においては,地下利用技術の中から,地熱エネルギー抽出ならびにCO2地中貯留を取り上げ,これらに関する技術の動向と現状を概観するとともに,解決すべき技術的課題について議論する。 地熱エネルギー抽出においては,出力減衰の課題に対して,貯留層構造を踏まえた還元等の涵養技術開発が必須であり,能動型システム開発への転換が求められていることを述べる.また,CO2地中貯留においては,いくつかのフィールド実験による検討状況について調査する。特に,地中貯留を設計するために超臨界CO2/岩石/水間の相互作用の解明が重要であることを示す。

『カーボンフリー燃料直接燃焼発電システムの研究開発』
壹岐 典彦
国立研究開発法人産業技術総合研究所 つくば東事業所
エネルギー・環境領域
 省エネルギー研究部門 ターボマシングル-プ(主務)
 再生可能エネルギー研究センター 水素キャリアチーム付(兼務)

カーボンフリー燃料である水素およびアンモニアは、低炭素社会における発電の燃料として期待されている。総合科学技術・イノベーション戦略会議のエネルギー・環境イノベーション戦略においても、水素ガスタービン発電やアンモニアの発電利用が取り上げられており、NEDOプロジェクトでは水素ガスタービンの開発に取り組んでいる。 アンモニアの直接燃焼利用はSIPエネルギーキャリアで取り上げられており、産総研は東北大学流体科学研究所との共同研究でアンモニア直接燃焼ガスタービン発電の実証試験を行っている。実用化するためにはアンモニア燃焼を高い燃焼効率で行い、NOx排出量を抑えることが大事と考えられ、低NOx燃焼器の開発に取り組んでいる。

『日本市場におけるエネルコン製風力発電機の強み』
久保田 直樹
エネルコンサービスジャパン(株)
セールスマネージャー 日本担当

地球規模の環境問題に加え、福島の原子力発電所の事故以降、日本国内では再生可能エネルギーへの、ここ2、3年は特に大型風力発電機事業への期待が高まっております。一方、台風、複雑地形による乱流、落雷、地震、等、日本は世界の中でも屈指の風力発電機にとって過酷な条件が揃っています。また、こういった過酷な条件に即した新たな法規制が適宜導入され、なるべく速やかな対応も必要です。なぜこの様な状況下において、1996年の日本市場参入以来、エネルコンの風力発電機が着実に成功を収めてきたのか、弊社製品の特長のみならず、サービス体制についてもご説明致します。

『日本の風況に合致した大型洋上風車の開発』
佐伯 満
(株)日立製作所
電力ビジネスユニット
自然エネルギー発電システム生産本部 シニアプロジェクトマネージャー

風力発電は、世界ではすでに主力電源になりつつあり、日本においても安定供給や環境適合、安全性の観点から期待が高まりつつある。日本は先行する欧州などと比べて台風、地震、落雷などの環境が厳しいという課題がある。日立はそのような社会的需要に応えるべく、信頼性を高めた洋上向け大型風車を開発したのでその開発内容を述べる。日立の5MW風車の仕様の概要は以下のとおりである。 (1)2軸軸受け外輪駆動方式を採用することでナセルを軽量化した。 (2) 平均風速が高いサイト向けHTW5.2-127と平均風速が低いサイト向けのHTW5.2-136をラインアップした。 (3)ダウンウインド方式を採用し、暴風停電時にパッシブヨー制御にスムーズに移行することで、暴風時の荷重低減を図った。

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