ホーム > ニュース > 2018.11.05

2018.11.05 「第七回 電力エネルギー未来技術シンポジウム」講演要旨

「第七回 電力エネルギー未来技術シンポジウム」講演要旨

『大型火力の高効率化に向けた最新技術開発動向』
渡辺 和徳
(一財)電力中央研究所
エネルギー技術研究所

「パリ協定」の採択・発効を受け、我が国の「地球温暖化対策計画」には、長期目標として2050年までに温室効果ガス80%削減を目指すことが盛り込まれ、閣議決定されている。そこでは、電力分野のCO2排出原単位の低減に向けた具体策のひとつに、火力発電の高効率化が上げられている。今夏、エネルギー基本計画が見直され、長期的には再生可能エネルギーを主力電源化すること等が示されたが、当面は火力発電が電力安定供給の要となることに変わりない。また、火力発電の高効率化は、発電コストの削減に向けて鍵を握る技術開発でもある。本講演では、現在国レベルで取り組まれている火力発電の高効率化に向けた技術開発動向について、その概要を紹介する。

『再生可能エネルギー対応可能な100MW級高効率ガスタービンの開発』
村田 英太郎
三菱日立パワーシステムズ(株)
ターボマシナリー本部GT技術総括部

世界的なCO2排出量削減の流れを受け、低効率で、稼働率の低い既設発電プラントの効率向上が要求されている。また、再生可能エネルギーの活用はCO2排出量削減に有効であるが、日照や天候等に発電量が左右されるため、電力系統の安定化を図るには出力調整と起動性に優れたガスタービンが適している。 これらのニーズに対して、既設コンバインドプラントのガスタービンをリプレースして、プラント効率を向上させる高効率100MW級二軸型ガスタービンを開発した。 本ガスタービンは二軸型としては世界最大出力であり高速起動が可能、更に二軸型であるため、機械駆動用にも適用できる。このガスタービン開発と、リプレース性能および起動性について紹介する。

『ガスタービンの高効率化および運用性改善に関する技術開発と導入』
菅原 由貴
東北電力(株)
発電・販売カンパニー 火力部

当社は,1984年に国内初の国産大容量ガスタービンコンバインドサイクル発電設備を東新潟火力発電所3号系列へ導入し,コンバインドサイクルプラントの画期的な熱効率48%(LHV:低位発熱量基準)および環境特性の良さを実証した。その後もコンバインドサイクルの核となるガスタービンに関する技術開発と導入を順次進め,2015年に営業運転を開始した新仙台火力発電所3号系列の熱効率は60%(LHV)を超えている。  現在進んでいる再生可能エネルギーの大量導入に伴い,火力発電設備に対しては,これまでの高効率な運転に加えて高速な出力等の運用性を兼ね備えることが求められており,この達成へ向けた技術開発と導入を進めていることから,これら取り組みについて紹介する。

『蒸気タービン高性能最終段の開発概要』
渋川 直紀
東芝エネルギーシステムズ(株)
エネルギーシステム技術開発センター

再生可能エネルギーによる発電割合が増加し、脱炭素化が社会の大きな潮流となる中、火力発電の熱効率向上が一層重要な課題となっている。蒸気タービンは、石炭、天然ガスを問わず火力プラントに幅広く用いられる主要機器で、性能向上のための技術開発が続けられている。特に低圧タービンの最終段落は、一段落のみで全体出力の約1割を担うため、性能向上の寄与度が大きい。一方、ほぼ真空まで膨張した蒸気を効率よく排気する流路面積を確保するため、翼長は1mを超えるものもあり、高速蒸気で高遠心力下での開発難度が非常に高い。本講演では、遷音速場での空力設計を中心に、構造設計、それらの検証試験例を交えて開発の要点について解説する。

『世界最大出力900MVA級水素間接冷却タービン発電機の高効率化開発と製品化』
田中 賢治
三菱電機(株)
回転機製造部

再生可能エネルギーの発電規模が拡大する中、火力発電に対しては電力の安定供給、エネルギー消費の削減、メンテナンス性の向上など様々な要求が高まっています。 これらの要求に対応すべく、三菱電機ではタービン発電機の高信頼性化、高効率化、保守省力化に積極的に取り組んでいます。その結果、水素間接冷却機としては世界 最大級となる900MVA級の高出力を、高効率で構造が簡素な水素間接冷却タービン発電機でいち早く製品化を実現しました。 また、これら高効率化に貢献する新技術は、高年稼働機の部分更新にも適用可能であり、既設発電機の高効率化・高出力化へ積極的に展開することで、電力の安定供給へ貢献していきます。

『水力エネルギーの有効活用に貢献する水車の高効率化技術』
谷  清人
日立三菱水力(株)
水力研究開発部

50年以上前に建設された中小規模の水力発電所においては,水力エネルギーを有効活用するために,水車の主要部品に最新の設計技術を適用して更新する特性改善が図られています。特に,発電所の規模や改善に伴う投資を考慮し,従来は標準的であった模型試験を行わず,流体解析のみでの形状設計,特性評価も行っています。流体解析により流動状態を詳細に模擬することで,特性改善の要因を特定し,そのような現象が発生しにくい新形状を見出しています。最近の水車は最大出力,定格出力での運転のみならず,無負荷と呼ばれる出力ゼロ付近まで運転されることもあるため,全運転領域で安定的な流れを実現できる形状が必要となります。このような水車の高効率化技術を紹介します。

『超耐熱モリブデン合金=モシブチック合金の高温クリープ強度と室温破壊靭性』
吉見 享祐
東北大学大学院工学研究科
知能デバイス材料学専攻

超高温材料の適用によるガスタービンの冷却空気の抑制,さらにはタービン翼の無冷却化は,夢の高効率発電技術として期待が高まっている。本講演では,東北大発の新超耐熱モリブデン合金=モシブチック合金の超高温域(1400 – 1600℃)における引張クリープ特性と,超硬合金と同等のレベル(>15 MPa(m)1/2)まで改良された室温での破壊靭性について紹介する。また,これら機械的性質に対するモシブチック合金のミクロ組織が果たす役割について議論する。

プログラムに戻る