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2016.10.03 「第五回 電力エネルギー未来技術シンポジウム」講演要旨

「第五回 電力エネルギー未来技術シンポジウム」講演要旨

『新仙台火力発電所第3号系列の建設 -高効率化と災害に強い発電所への取り組み-』
塚本 祥
東北電力株式会社
火力原子力本部火力部 火力建設グループ

 東北電力(株)は電力の安定供給と二酸化炭素の排出抑制を目的に,新仙台火力発電所において経年化が進んだ1,2号機を廃止し,新たに高効率ガスタービンコンバインドサイクル発電設備(GTCC)である3号系列へのリプレース工事を行い,平成28年7月に営業運転を開始した。
 3号系列にはタービン入口ガス温度1500℃級の最新鋭ガスタービンを採用するとともに,設計から試運転までの技術検証に,これまで当社が蓄積したGTCCの保守・運用知見を反映することで,世界最高レベルの熱効率を達成した。
 また,東日本大震災の被害を教訓として,津波被災後の早期復旧を目的とした機器配置および防潮堤,盛土の設置等によって,災害に強い発電所とした。

『高効率HA型ガスタービンの運用状況と開発動向』
藤本 治貴
GE Power
Gas Power Systems
Proposal Leader - APAC

 GEのHA型ガスタービンは、既存のF型ガスタービンで実証済みの技術に加え、性能向上に有効な単結晶合金製のブレードや遮熱コーティングなど、ジェットエンジンをはじめとした他分野での実績ある技術も活用しています。このガスタービンを導入したフランスのブシャン火力発電所では送電端効率62.22%を達成し、世界最高効率のコンバインド・サイクル発電所であることがギネス世界記録として認定されました。更に発電システム全体としては、起動開始後30分以内に最大出力値に到達可能であるため、日々の電力需要の変動に対応できるとともに、風力や太陽光など自然条件の影響を受けやすい再生可能エネルギーの補完が可能です。以上のように高効率で柔軟な発電所運用を実現する、GEのガスタービンについてご紹介します。

『欧州におけるガスタービンの開発および運用状況』
大築 康彦
シーメンス株式会社
パワー&ガス事業本部 セールス部

 シーメンスは大型事業用から小型産業用、航空機転用までフルラインアップのガスタービンを製造する世界有数のガスタービンメーカである。本講演では、シーメンスのガスタービン全般をご紹介するとともに、欧州における再生エネルギー・原子力の動向を含めた電力事情、これに伴う技術課題、その課題を克服するための技術開発をご説明させて頂いたいと思う。また、近年運開した高効率コンバインド火力発電所を例にとりながら、現時点における達成状況、その先の方向性をお話しさせて頂き、日本の電力市場の将来を考える指針の一助になれば幸いである。

『逆転的発想による遮熱コーティングの界面強度向上のためのボンドコート材料の開発』
小川 和洋
東北大学大学院工学研究科
附属先端材料強度科学研究センター 教授

 近年,先進火力発電用ガスタービン動静翼等の高温保安部材に適用される遮熱コーティング(TBC)は,最重要技術であり,TBC無くしてガスタービンの運転はできないといっても過言ではない.しかし,セラミックトップコートと金属ボンドコートの界面に熱成長酸化物(TGO)が生成・成長し,その熱膨張係数の違いからはく離等の劣化を誘発することが危惧されており,これまでの研究ではこのTGOを生成させないための工夫が取られてきた.しかし,本研究においては,ボンドコートへCeおよびCeO2添加により,トップコート/ボンドコート界面に積極的にTGOを生成させ, 4点曲げ試験による界面強度評価において,従来材よりも2~3倍界面強度が強いTBCの開発に成功した.

『広い負荷帯で高効率を実現するガスタービン運転制御技術』
畑尾 翔
株式会社IHI
エネルギー・プラントセクター
原動機プラント事業部 プロジェクト部

 ガスタービン発電設備、特に航空転用型ガスタービンを用いるものは起動・応答が早いという特性があり、電力需要の変動に合わせた柔軟な運用が可能である。 その一方で、ガスタービンには部分負荷運転時に効率が悪化するという欠点があり、電力需要が低い夜間などでも採算が取れるように運転を継続したいとする発電事業者のニーズに応える上での課題となっている。
 本発表では、この問題に対する一つの回答であるガスタービンの運転制御によって広い負荷帯で高効率を実現する技術、特に低需要時においても最大負荷運転による高効率な運用を可能にする蒸気利用吸気加熱システムを用いたガスタービン吸気温度の最適化について解説する。

『高効率分散型発電システムと水素ガスタービン発電に向けた開発動向』
合田 真琴
川崎重工業株式会社
ガスタービン・機械カンパニー エネルギーソリューション本部
ソリューション技術部長

 当社は中小型ガスタービン/大型ガスエンジンをキーハードに,分散型発電システム,コージェネレーションの高効率化に継続的に取り組んでいる。
 H26年のエネルギー基本計画では水素利用が初めて大きく記載され,またH27年の長期エネルギー需給見通しでは分散型エネルギーシステムの導入促進が記載されており,それぞれ注目されている。
 本発表では分散型発電システムの動向と,前述の施策に関連する高効率ガスタービンの開発について及び水素ガスタービンの開発についてご説明する。

『次世代型高効率発電技術の開発動向』
安威 俊重
三菱日立パワーシステムズ株式会社
ガスタービン開発部 ガスタービン統合開発2グループ
グループ長

 化石燃料を利用する発電設備の中でも最も高効率かつクリーンな発電設備であるガスタービンコンバインドサイクル発電は、シェールガス田開発などにより主燃料となる天然ガス供給源の拡大を背景に、世界的な需要がますます高まっている。
 当社は1960年代にガスタービンの製造を始めて以降、国家プロジェクトで培った最新技術等を採用し、1600oC級のJ形ガスタービンの開発に成功している。近年は更に高効率化を目指し、強制空冷燃焼器を採用した次世代ガスタービンの開発、検証を順調に進めている。
 本講演ではJ形を含めた当社のガスタービン開発の歴史及び次世代ガスタービンに採用する技術及び当社実証設備における検証結果についてご説明する。

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